コラム

2016/08/06

名前が刻まれる重み(長野・JI)

名前が刻まれる重み


▼投票所で紙片を受け取 り、候補者の名前を書き込んで箱に放り込む。時間にして1分程度だろうか。選挙に行くたび、投票とは小さな行動なのだと感じる。しかしその一票の行方が、自治体や国の政治を左右する。薄い紙片だが、かなりの重みがあるのだ


▼候補者の名前を鉛筆で紙片に刻み込む投票者。その心境は、明るい未来を託したのかもしれないし、ただの思い付きかもしれない。同じ名前を書いていても、人によって思いは異なる。書いた名前が異なるならば、託した未来はまるで違うものだろう


▼建設事業に携わった技術者の名前を、銘板に記載する試みが長野県で始まった。それが『担当した技術者の名前を刻もうプロジェクト』である。その一つ目の銘板が、7月に完成した上高地トンネル坑口の脇に設置された。設計・施工(元請・一次下請)の会社名と担当した20人の技術者名が刻まれている


▼事業に携わった技術者たちは、そこに名前が記されたことを誇りに思うだろう。家族や友人に自慢するだろう。同僚からはうらやましがられるだろう。そして次の仕事に意欲を持って取り組むだろう。つらい時でも、銘板を見るだけで勇気が湧いてくるだろう。プロジェクト内容は決して派手ではないが、技術者本人と周囲に、建設業の素晴らしさをあらためて実感させるものだ


▼東京都知事選では小池百合子氏が当選した。首都・東京をどのように導いていくのか興味深いところだ。多くの人々が投票所に行き、紙片に名前を刻み込んだからこその当選。その重みは十分に認識しているはず。人々の期待を忘れてしまえば、裸の王様と化す。(長野・JI)


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