コラム

2016/08/26

華やかな式典の陰に(山梨・HK)

華やかな式典の陰に


▼8月6日の出来事。NHK7時のニュースのトップは、華やかに行われたリオ五輪の開会式だった。環境保護と平和をテーマに演出されたと聞くが、移民国家であるブラジルの歴史をたどるなかで、原爆投下の時間に合わせて日系移民を表現した踊りが披露される粋な演出もなされた


▼以前から指摘されていた競技場やインフラ整備の遅れであったり、ジカ熱など衛生面やひったくりや強盗といった治安の問題。さらにドーピングや難民選手団など、世界的に考えなければならないもろもろの課題を片隅に追いやるかのようにセレモニーが大きく報道された


▼未来を見つめ今を生きることが大切なのは誰もが納得するところ。こと五輪に言及すれば、日本の場合は4年後の地元開催が常に念頭にある。目標として掲げた金メダル14、メダル総数30個以上も次回を考えての数字と聞く


▼その日、2番手のニュースは広島で行われた平和記念式典の模様。あの日から71年が経ったことしも、原爆死没者名簿奉納、式辞、献花、黙とう、平和宣言が厳かに執り行われた。これまでと変わらない不戦の誓いと平和への願いが込められている


▼未来は自らの力で切り開けるが、過去の事象は変えることはできない。「史上初めて」「何十年ぶり」と華々しくメダル獲得の雄姿が報道されている。その陰にコンマ1秒、たった1点。わずかな差で栄光に届かなかった者や、目指したもののその舞台にさえ立てなかった者がいる。何より、世界的イベントを開くことができる世の中を築いた先人たちの存在を、その日のニュースはあらためて教えてくれた。(山梨・HK)


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