コラム

2016/09/06

担い手確保のはずなのに(埼玉・UT)

担い手確保のはずなのに


▼「地方自治体が若者を次から次へと企業から引き抜いている」。地場大手ゼネコン総務部長が抱えている一番の悩みは、若手技術者の公務員への転職だという


▼「30歳前後で一級土木施工管理技士の資格を取得した直後、市役所の中途採用に応募してしまう」「ここ5年ほど毎年1人のペースで市役所に転出している」と嘆く。人材確保競争は産業間のみならず、土木分野の受発注者間でも激しく行われている


▼担い手3法の施行により、建設産業の担い手確保・育成がクローズアップされている。従来の3K「きつい」「汚い」「危険」から、新3K「給与」「休暇」「希望」に仕事のイメージを転換する必要がある。官民が連携し、設計労務単価の適正化、週休2日制の拡大、教育訓練の充実などが進められている。ICT(情報通信技術)を活用した施工も急速に広がりそうな気配がある。こうした取り組みを逆戻りさせないことが何よりも重要だろう


▼「企業は人なり。特に技術を売りにしている建設会社にとって、技術者を奪われては企業経営が成り立たなくなり、いずれ倒産してしまう」。部長の悩みは深い。「新卒採用については申し上げることはない」とした上で、一人前に育てた技術者を役所が中途採用する件については「控えていただきたい」というのが切実な願い


▼「職業選択の自由」「本人の意思」と言ってしまえばそれまでだが、見方によっては、発注者が建設企業の担い手を奪ってしまっている。これでは担い手3法の基本理念と逆方向。もちろん企業側も、自社の魅力を高めるための努力を絶えず続ける必要がある。(埼玉・UT)


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