コラム

2016/09/14

ミノムシが作る木造住宅(茨城・TI)

ミノムシが作る木造住宅


▼台風による大雨の音を聞いていると、先日通勤中に見かけたミノムシを思いだ出した。木の枝をまとったミノムシは、生垣に隠れるようにぶら下がっていた。強い雨で飛ばされないかと考えたが、そこまで弱い造りはしていないはずだ。枝を柱に葉を壁にし、糸を紡いで巣とする。ミノムシは、小さな『木造住宅』を作る職人だ


▼ミノムシの中で最も大きいオオミノガは、非常に高い強度の糸を作り、粘性で枯れ葉や枝などを絡め、袋状の蓑(みの)を作る。幼虫のころから小さな蓑を作り、成長に合わせて拡大を繰り返していく。家のリフォームをしながら、雄だけがサナギから成虫へと羽化する


▼ただし近年の環境の変化で、ミノムシは寄生ハエの被害に遭い、数が激減している。どこの世界でも職人や担い手の不足が起こっているのかもしれない


▼最近の住宅事情を見てみると、人口減少や少子高齢化により、木造住宅の着工件数や大工などの職人が減少している。そこで建築業界では、木材の利用促進と木造住宅を建築する技術者の育成を推進しており、現場で培われた経験や知識を継承するため、講習会やマニュアル作りを積極的に行っている。一度伝統の技が途切れてしまうと、その技術の再興は難しいものとなる


▼雨上がりに生垣の脇を通ると、ミノムシはしっかりと残っていた。雨や風にも負けず、ミノムシは羽化を待っていた。小さいながらも、それもまた立派な家なのだ。形は違えども、古き良き木の家を絶やしてしまっては寂しくなる。ミノムシに負けない家を建て、技術や伝統を守ることが、明るい未来につながるはずだ。(茨城・TI)


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