コラム

2016/10/15

ジャイアンを探す(茨城・YN)

ジャイアンを探す


▼国民的な人気漫画ドラえもんに登場する乱暴者でわがままなジャイアン。強引に他人の漫画やゲームを取り上げて自分のものにする、極めて自己中心的なキャラクターだ


▼茨城県古河市に工場があり、ここを統括するある人に聞いた話を思い出した。「社員一人一人を財産と捉え、社員と会社、地域が成長する企業を目指す」と。なるほどこの企業の理念には「誠意があり、温かく思いやりのある行動をする」「相手を知り、相手の気持ちに応じたやり方で目標を達成する」などが掲げられていた


▼裏付けもあった。社屋を建て替えるとき、最初に手を付けたのは社員が利用する駐車場。冬の寒い夜に仕事を終え、暗い敷地を肩をすぼめ下を向いて帰るのは寂しかろうと照明をつけた。明日も元気にと、前を向いて帰路に就いてもらう。驚きはまだあった。工場の改修にあたり、見積もりを提出した企業へ「この金額でビジネスは成立するのか?」と二度尋ねたという


▼社員一人一人を思いやり、優しく気遣う温かい心。取引先の利益まで配慮する気持ち。公共事業の受注もビジネスの一つ。最低制限価格ギリギリの落札で利益は生まれるのか。企業の発展こそ、その地域のさらなる経済発展につながる。利益は当然の報酬だ


▼さて、ジャイアンの名言といえば「お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」だが、この言葉の真の意味は、相手の痛みや苦しみも俺のものということではないか。企業で一番大切なものは人。「人を求めるとき、ジャイアンを探す」という一言が、今も強く心の中に残っている。人が明日(みらい)を築く原点だと。(茨城・YN)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら