コラム

2017/02/10

月にまつわる先入観(埼玉・HK)

月にまつわる先入観


▼先入観という言葉は、あらかじめ得た情報に基づいた、偏った認識・解釈との意味合いで使われることが多い。新聞記事の執筆にあたっても、先入観が大敵となる場合がある。例えば「前回取材したときはこうだった」と過去の情報を引用すると、実際は変遷していることがあるからだ


▼先日、ふと夜空を見上げると、きれいな満月が懸かっていた。写真に撮り、5歳の息子に月の黒い部分(月の海)が何に見えるか尋ねると「うさぎ!」と即答した。月にいるうさぎが餅をつく描写を絵本で見たことがあるようだ


▼月にうさぎがいるという話は日本や中国など各地で伝承されており、インドの神話が発祥という説がある。ほかの地域は月の見える角度が異なることなどから、北ヨーロッパでは本を読むおばあさん、南ヨーロッパではカニ、アラビアにおいてはライオンといった具合。カニの場合は、うさぎの耳の部分が大きなはさみに相当する


▼当然のことながら、月の見え方に正解は存在しない。千差万別の答えがあってよく、息子の答えに先入観が影響していたことは想像に難くない。ただ、先入観といえどもネガティブな印象は全く受けなかった。それどころか、先人たちが月を見上げてうさぎを連想したことが、古くは飛鳥時代から伝わっていることを知り、郷愁すら覚えた


▼社会生活において先入観を持つことは事実誤認につながることも多いが、月を見るときは例外だろう。満月の夜には、うさぎを見つけて先人に思いを馳せるもよし、先入観を排して誰も見たことがないものを探すのも一興かもしれない。(埼玉・HK)


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