コラム

2017/04/08

カラスの恩返し(埼玉・HK)

カラスの恩返し


▼カメラを携えて出歩くと、家々に紛れた稲荷神社や街角にたたずむ道祖神などを発見し、普段いかに注意散漫で通り過ぎているかを実感する。自然豊かな公園に立ち入れば、咲き誇る花々、活発に動き回る虫、羽を休める鳥に出会い、生態系の縮図が身近に存在していることに気付かされる


▼先日、近所の公園で毛繕いをしているカラスのつがいにカメラを向けていたところ、通りすがりの女性に「カラスを撮っているのですか。ゴミを散らかして困りますね」と話し掛けられた。「よく見るとかわいげがあるのですよ」と返したが、彼女の一言はカラスに対する一般的な印象を代表しているように思えた


▼国内でよく見かけるカラスはハシブトガラスとハシボソガラスの2種。英語でハシブトをジャングルクロウ、ハシボソはキャリオンクロウと言い、ジャングルは密林、キャリオンは死肉を意味する。都会に生き、生ごみを漁る(あさる)姿からは想像できないかもしれないが、本来なら密林に生息し、動物の死肉を食していることがわかる


▼三つ足のカラスとしてサッカー日本代表のエンブレムなどに使用されている八咫烏(やたがらす)は、日本神話において神に遣わされ神武(じんむ)天皇の道案内を務めたという。古くはあがめられていたカラスは、望みもせず人間の生活環境に順応したことで、忌み嫌われる存在になっている


▼烏に反哺の孝(からす・に・はんぽ・の・こう)ありということわざがある。カラスが親鳥の口に食料を含ませ育ての恩に報いることから、親孝行のたとえに使われる。嫌悪感からただ排除するのではなく、生命への敬意を忘れず共生を真剣に考えれば、恩返しがあるかもしれない。(埼玉・HK)


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