コラム

2017/05/13

竣工を迎えるとき(山梨・HI)

竣工を迎えるとき


▼新年度を機に、多くの人が出会いと別れを経験する。それは人同士に限らず、人と建物にも同じく存在する


▼最近、学校の竣工式に参加した。外観は汚れ一つなくピカピカで、施設内は木の香りが漂っている。式では、県知事をはじめ、施工関係者や学校長などが期待を込めたあいさつを行い、生徒からは感謝の気持ちを込めて合唱が披露された。出席者の多くが新校舎に心躍る中、一人の中年の方が話し掛けてきた。「少し寂しいね」と。新校舎建設のために解体された旧校舎での思い出を聞くことができ、華々しい建物竣工の裏に、ちょっぴり悲しい別れがあることに気付いた


▼小学生のころ校舎の建て替えのために仮設校舎で授業を受けていたことをうっすら覚えている。出来たてホヤホヤのにおいやピカピカの校舎がうれしくて駆け回ったり、20分休みのチャイムと同時にボールを持って校庭にかけだし、キックベースやドッジボールで遊んでいた。数え切れない思い出がその場所には凝縮しているのだ


▼施設の老朽化は必然的にやってくる。ある市では公営住宅を統合する計画が進み、新しい設備やバリアフリーが導入された住宅での新生活に期待する一方で、長年住み続けてきた愛着ある家に対して果たしてどんな想いを巡らせているのだろうか


▼新しい施設を建設するとき、当然そこには土地が必要で、別の施設が建っている場合もある。それらは誰かにとって、かけがえのない場所であるかもしれない。出会いと別れは人にスポットが当たりがちだが、建物竣工の裏にも出会いと別れがあることを忘れずに取材に励みたい。(山梨・HI)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら