コラム

2017/05/18

一生懸命が引き付ける(山梨・HK)

一生懸命が引き付ける


▼昨今、世間は多少の事件では驚かないであろう。テロのニュースを毎週のように耳にし、弱い立場の人々を守るべき人物が逆に牙をむくような事件が日本列島を駆け抜けている。そんな麻痺した神経に、スポーツ紙の見出しの文字さながら〝電撃〟が走った。フィギュアスケート浅田真央選手の引退報道である


▼ジュニアの時代から注目され、これまで築き上げてきた実績をたたえるとともに、引退を惜しみ、ねぎらい、感謝する言葉がインターネット上に溢れかえった。会見の席での受け答えも、一つ一つ丁寧に、素直に、そして一生懸命にこなす姿は、国民的スターであり続けたことが納得できる対応であった。フィギュアスケートを人気スポーツに押し上げた功績が多大であることに異論はなかろう


▼魅力である。アスリートを超えた人間として衆人が関心を持ち、注目し、応援させる魅力が彼女にはあるのである。そう考えたとき、一人の人物が頭をよぎった


▼今でもミスターの愛称で呼ばれる長嶋茂雄氏がプロ野球で活躍した時代は、まだまだ日本の高度成長期。物資は少なく決して裕福と言えたものではなかったが、故に、純粋に豊かな暮らしを求める庶民であったと思われる。華やかな世界で愚直なまでにボールを追い続け躍動する氏のパフォーマンスに、人々は引き付けられた


▼浅田選手の引退報道のなかにコーチの談話として「練習をやめさせることに苦労した」との一言も。時は流れ、バブルの狂乱を登り詰め、余った物資が廃棄される平成の現在であっても、脇目も振らずにただひたすらに物事に打ち込む姿は共感を生むものだ。(山梨・HK)


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