コラム

2017/09/09

畏怖(いふ)の念を忘れず(埼玉・HK)

畏怖(いふ)の念を忘れず


▼先般、児童がヘビにかまれ、入院したことを伝える報道が相次いだ。児童自らヘビに触れたことが発端というから、いかに畏(おそ)れが欠けているかがうかがい知れる。そこで、毒ヘビ・ハブと闘い続けてきた奄美群島の人々が抱く畏怖の念を教訓にしてほしい


▼かつて、海のかなたに楽園ネリヤカナヤがあると信じ、海の幸をユリムン(贈り物)と呼んだことからも、彼らと海の密接な関わりが容易に想像できる。その一方で、陸地の開発が抑制され、原生林などの自然環境が保たれたのは、魔物を意味するマジムンと呼ばれ恐れられたハブの脅威があったからといわれている


▼明治時代後期のハブ咬傷(こうしょう)者は年平均で200人を優に超え、その10%以上が亡くなったという。その後、抗毒血清の普及により死亡率こそ減少したものの、1970年代まで咬傷者は減らなかった


▼1979年、駆除を目的として数十匹のマングースが野に放たれた。しかし、自然環境下でマングースが捕食するのはハブではなく、固有種のアマミノクロウサギなどだった。結局、奄美において生態ピラミッドの頂点に君臨するハブを退治できるのは人間だけであり、生体の買い上げによる個体数抑制が続けられている


▼2006年から15年まで10年間の咬傷者は年平均約56人。死者は1人だった。被害が大幅に減少した現在でも、一部地域ではハブを退治するため、各家屋の塀や石垣などに長さ2mはあろうかという木の棒・用心棒が立て掛けられている。本土においても、あらゆる危険を意識し、畏怖の念を忘れないため、心に一本、用心棒を抱えてはどうだろう。(埼玉・HK)


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