コラム

2017/10/31

食べるという楽しみ(山梨・HK)

食べるという楽しみ


▼実りの秋である。当地山梨県は、日本一の収穫量を誇るブドウやモモをはじめとして果物の産地として名高い。収穫時、畑に沿った街道には旬の果物を取りそろえた店が軒を連ね、観光客でにぎわい、何かにつけてぶどうを食する機会も増えるもの


▼昨今、それらの店先にはシャインマスカットの幟(のぼり)が目立つ。地元の市議会定例会の中でも、この品種の苗が不足しているなどの声も聞かれ、その人気ぶりがうかがえる。「皮を気にせず丸ごと食べられ種がない」そこに消費者は飛びつくと考えるが、その裏には当然ながら生産者の苦労が隠されている。従来の品種を掛け合わせて新たな品種をつくるという、試行錯誤の積み重ねの末に到達した宝の山とも言えようか


▼農産物に限らず、新製品開発にあたっては消費者の動向が大きなウエートを占める。アンケートによる志向調査や試食の実施は想像に難くない。ブドウに関して言えば、おいしい点はもとより食べやすさに焦点が当てられての人気であろう


▼家電製品の業界では軽薄短小が進んだ。使いやすさ、扱いやすさの面から人々は持ち運びに便利な、言ってしまえば「楽」な暮らしを求め、メーカー側もそれに応えてきた。やたらと手間がかかり、無駄な時間ばかりが増える生活は願い下げだが、やたらと便利になる暮らしに一抹の不安も無きにしもあらず


▼多少の手間が掛かっても、重量感があり肉厚で食べ応えがあるサイズの果物を喜ぶ人もいるのではないか。食するという「楽しみ」からも、面倒という時間をそぎ落としていくのも時代の流れなのかと、実のない房を眺め一人思った。(山梨・HK)


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