コラム

2017/11/15

小さなことから許さない(群馬・OS)

小さなことから許さない


▼壁の落書きを消したら重犯罪が減った。ニューヨーク市での有名な話。1980~90年代、年60万件もの犯罪が起き、殺人事件も頻発していた無法地帯をどうにかしようと市長たちは対策を考えた。落書き消しなど的外れ「もっと重犯罪に即効性のある対策を」との声も多い中、あえて軽犯罪に目を向けた。するとその対策は次第に効果を上げ、活動は広がっていった


▼公共の場での泥酔やごみのポイ捨て、無賃乗車などの軽犯罪を取り締まることで重犯罪が減っていく。犯罪学者はこれを「割れた窓理論」と名付けた。割れたままの窓を見た人はその建物を誰も気にしていないと感じる。すると他の窓も割られる。無法状態の雰囲気は広がり、犯罪がエスカレートしていくという理屈


▼労働災害も同様といえよう。事故の多くは「これくらい大丈夫」から始まる。決められたルートが面倒だからショートカット。短時間の作業だから、馴れてるから安全帯は付けない。現場が散らかっているが作業に支障はない。「これくらい」その小さな油断が、危険の呼び水となる


▼経験を重ねれば自己判断は増えていくもので「結果的に事故は起きなかった」その誤った経験が行動指針となり安全から遠のく。さらに問題となるのは、その雰囲気が現場全体に伝染すること。「大体のところでやろうや」そうなればルールは徐々に崩れる。一人が二人、二人が四人。全体が染まるのにそう時間は掛からない


▼転落しても重機に挟まれても職人と企業が積み重ねてきた信頼は終わる。安全がいかに大切か、ということを病院や棺桶に入ってから気付いても遅い。(群馬・OS)


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