コラム

2017/12/16

目配りは足元から(新潟・CY)

目配りは足元から


▼「見て見て」と娘が広げた手にたくさんのマメ。熱心にうんていの練習をしているそうだ。ほんの数カ月前はぶら下がるのが精一杯だったのに、今やスムーズに渡りきる。こちらも昔とったきねづかと挑むも、少し進んでもうしんどい。5歳児にあえなく敗北した


▼漢字は雲梯。雲にはしごとはぴったりな名前だが、城壁を攻める兵器だった。専守防衛で名高い中国の思想家・墨子は、雲梯を用いて攻め入ろうする大国の王を説得するため、シミュレーションを披露してその脆弱さを指摘し、諦めさせたという。一見画期的だが足元が危ういことはままある


▼反対に取るに足りないようなことが流れのきっかけになる場合もある。こんな話を聞いた。食事の場所を決めあぐねていたとき、某有名ハンバーガー店が目に入った。ここにしようと言うと、それだったらここはどう?あそこも美味しいよ、と次々に案が出た


▼物理学者の前野昌弘さんのツイート。高校の先生に「どうしたら生徒はいい質問をしてくれるか」と聞かれて「バカな質問も許すこと」と答えた。いい質問をしてくれという気持ちでいたら質問そのものが出てこない。バカな質問がどかどか出ればそのうちいい質問も出てくる


▼行動経済学のR・セイラー教授は「人間は必ずしも合理的ではない」を前提とする。ある目的に誘導したいとき「ナッグ(しつこく文句を言う)」より「ナッジ(軽く肘を突く)」のほうがより高い効果を得られるという。世に山積する課題に、劇的な解は無い。長いはしごで雲を目指すのもよいが、足元への目配りも大切だ。きっかけは身近にあるかもしれない。(新潟・CY)


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