コラム

2018/01/26

水は方円の器に随う(埼玉・KM)

水は方円の器に随う(したがう)


▼戦国時代、尾張国に織田信定、信秀という親子がいた。尾張国主の家臣の家臣という家柄で家格は決して高くない。しかし商いに通じていたらしく、父親の信定は水上交易で栄えた港町津島を掌握、一躍財を成した。さらに息子の信秀は、熱田など陸上交通の要所を支配し経済基盤を強化。斎藤道三や今川義元といった大物と渡り合い「尾張の虎」と恐れられた。その虎の息子が、あの織田信長である


▼古くから「水は方円の器に随う」という。人は環境や交友関係で良くも悪くもなるという意味だ。信長が良い方向に転んだのは間違いない。数え27歳で今川義元を桶狭間に討ち、34歳で上洛。国際都市の堺を支配し、莫大な富の力を背景に強大な軍事力を得た。活気あふれる交易都市を見て育ったことが、信長の経済重視の生き方に強く影響したのだろう。人が育つ環境というのは実に重要なのだと痛感する


▼先日、さいたま県土整備事務所で園児たちが重機と触れ合う体験会を取材した。普段はなじみのない重機を間近に眺め、実際に動かしてみる体験に園児たちは夢中で取り組んでいた


▼体験会の印象は強く心に残るようで、後日思い出を絵に描く子どもも多いそうだ。未来の担い手確保に期待は高まる。インフラを整備し生活の土台を支える建設業の社会的意義を知ってもらう入り口としても体験会の役割は大きいだろう


▼信長が故郷の交易都市から経済感覚を養ったように、子どもたちにも建設業を身近に感じ、その価値を知ってもらいたいと思う。建設業に触れる体験が、水のように柔軟な子どもたちの心の水面(みなも)へ一石を投じるものになればいい。(埼玉・KM)


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