コラム

2018/03/29

携帯電話を携帯しない日(埼玉・YM)

携帯電話を携帯しない日


▼「昔の棋界は牧歌的だった」とある将棋棋士が話していた。昔なら1年使えた戦法が、3カ月ほどで破られるようになった。昔なら午前中はゆっくり進むタイトル戦が、現在は午前中から激しい対局になるなど状況が一変している


▼街や駅で歩きスマホの人をよく見かける。携帯電話の普及は、誰とでもすぐにつながるメリットもあるが、どんなときでも対応しなくてはいけないデメリットもある。車の運転中に電話が鳴れば、気持ちは焦るばかりで心の余裕がなくなる


▼本田技研工業と言えば本田宗一郎氏が有名だが、もう1人の創業者と言われる藤沢武夫元取締役最高顧問は、ある人から「茶室をつくれよ。電話も置かず、外部と一切遮断した生活をしなさい」とアドバイスをもらう。藤沢氏はその言葉をヒントにビルの1室を借りると、他社の経営分析や自社を大局的に眺めるなど経営について考える時間を設けていた


▼インターネットの普及に比例してさまざまな情報が飛び込んでくる。許容範囲を超えた情報を浴びて、精査することなく早く消費(処理)することに終始していないだろうか。情報とは消費するものではなく、積み重ねるものである。それぞれの情報はつながっていなくても、俯瞰(ふかん)すると線となり面となり立体となって見えてくる


▼情報と情報を結ぶには、牧歌的な心が必要な時がある。心の余裕が新しいアイデアを生むきっかけになるからだ。情報化社会だからこそ、携帯電話やノートパソコンを家にわざと置いて行く日があってもいいと思う。茶室じゃなくても自分の空間で情報を精査する時間は、何よりも大切な時となるはずだ。(埼玉・YM)


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