コラム

2018/04/12

日頃の備えを万全に(埼玉・KM)

日頃の備えを万全に


▼その昔、関東一円に大勢力を築いた戦国大名・北条氏を大いに苦しめた城があった。小大名・太田資正(すけまさ)の支城で、名を松山城(埼玉県吉見町)という。地形に恵まれた天然の要害で、武器弾薬の蓄えもおびただしかった。数里離れた本城・岩槻城(さいたま市岩槻区)を守る砦(とりで)として万全の備えを固めていた


▼そればかりか、この城には凄腕の伝令がいた。北条軍が城を幾重に囲んでもいつの間にか抜け出し、岩槻城に援軍を呼びに行くことができた。得体の知れない敵の存在に北条軍の中には「人ならぬ者の仕業か」と不気味に思った者もいただろう。なるほど人ならぬと言えば確かにそのとおり。なんと犬の仕業だった


▼「犬の入れ替え」という資正の奇策である。松山城と岩槻城で別々に育てた犬たちを成長後に入れ替え、有事の際の伝令兵に使ったのだ。首には文を入れた竹筒をくくり付けた。犬たちは平時から両城を行き来して訓練を積んだようで、城が敵に囲まれてもすぐに援軍を呼びに行けた。発想もすごいが、うまくいったのは日頃の備えのたまものと言えよう


▼先月、地震や武力攻撃など緊急情報を瞬時に知らせるJアラートの情報伝達訓練が全国一斉に行われた。消防庁によると、47都道府県と1664市町村が参加。そのうち川越市や水戸市など15市町村で、機器の不具合のため住民への情報伝達が一切できなかったという


▼伝達後の避難方法など他の課題も多いが、初動対応はその後の明暗を大きく分ける。行政や関連する建設業者の役割は大きい。いつ起こるとも知れない災害にどう備えるか。防災の心構えを古兵(ふるつわもの)に倣(なら)いたい。(埼玉・KM)


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