コラム

2018/06/21

あの工事の背景には(群馬・YY)

あの工事の背景には


▼先日、取材先で興味深い話をうかがった。取材担当地域の一つである群馬県太田市は、排水路や調整池整備に力を入れている町だ。同市には大きな河川が少なく、豪雨になると水の逃げ場が無くなり道路冠水が発生する。素人ながら一連の治水対策は、このような地理的理由から来るものだと考えていた


▼しかし取材中の何気ない会話でそれが「大間々扇状地」に起因することを知った。扇状地は河川が山間部から土砂を運び、下流部に扇状の地形を形成するもの。同市はその扇端に当たるのであるが、扇状地をつくり出した渡良瀬川は現在、同市北東部を迂回するように流れている。実に10万年もの時間をかけ、渡良瀬川はその流路を変えていったそうだ


▼扇状地は河川が運んだ砂利が堆積し、水はけが良い。そのため水に乏しく、稲作には向かない土地だ。大間々扇状地でも古くは江戸時代前期に農業用水の開削が計画されたが、技術的な問題から実を結ぶことはなかった。畑作中心で藪塚、赤堀と周辺にスイカの名産地が多いこともうなずける


▼河川は無くとも水はけが良いため、水害とは元来無縁の地域。冠水被害が生じるのはなぜなのか。それには市街化はもちろんのこと、農業生産の効率化も関係しているそうだ。作物の年中収穫を可能にしたビニールハウスは、郊外ではよく見かける農業施設である。しかし土を覆う分、雨水の逃げ場が無くなり、道路に水があふれてしまうとのこと


▼今回の取材を通して知ったこれらの背景。工事概要だけではなく、地域の風土や気候まで視野を広げると、より取材対象への理解が深まると感じた次第である。(群馬・YY)


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