コラム

2018/06/29

残すべき日本遺産(山梨・HK)

残すべき日本遺産


▼5月に2018年度の日本遺産13件が新たに認定された。建造物や遺跡にとどまらず歴史や文化とともに紡(つむ)がれたストーリーが認定の対象となる


▼北海道の先人アイヌや昔話の代表格である桃太郎が取り上げられている。ただ訪れるだけではなく、時の流れも味わいながらその土地の風に吹かれてみたくなるような物語がそこにある


▼山梨県では初めての認定となる「葡萄(ぶどう)畑が織りなす風景」と「星降る中部高地の縄文世界」の2件が選ばれている。1件目は生産日本一を誇る山梨県の中でも栽培が盛んな峡東3市(山梨市、笛吹市、甲州市)が舞台。奈良時代からとされる栽培の歴史を物語る建物も残され、眼下に広がる葡萄畑は昔のままであるかのようだ


▼もう一つのストーリーは、県内6市と長野県の3市3町2村にまたがる八ヶ岳周辺における1万年もの時を超えた歴史絵巻だ。この物語は、国宝にも指定されている「縄文のビーナス」「仮面の女神」をはじめとする土偶や遺跡、土器などの出土品とともに石器としても使用されていた黒曜石にもスポットが当てられている。全国で70カ所以上とされる産出地の一つであり、採掘跡が点在。国の指定史跡とされている星糞(ほしくそ)峠黒曜石原産地遺跡の麓には石器や勾玉(まがたま)づくりを体験できるミュージアムが整備されている


▼1万年もの長きにわたり続いた縄文時代とは如何(いか)なる社会であったのか。想像するだけで旅の楽しみを何倍にもさせてくれる物語がこれからの地域の魅力の一つとなるであろう。将来に残していかなくてはならない日本遺産。人の記憶に刻まれ、語り継がれてこそ遺産と言えよう。(山梨・HK)


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