コラム

2018/07/14

新陳代謝を前向きに(東京・KK)

新陳代謝を前向きに


▼近所にあった書店が先日惜しまれながら閉店した。頻繁に利用していただけに非常に残念だが、厳しい出版不況の中での経営判断だったと思われる。専門書や洋書を中心に特色ある品ぞろえで有名だった東京・六本木のブックセンターも閉店したことを考えると、今後の書店離れの加速が懸念される


▼営業最終日に書店を訪れると「長年のご愛顧誠にありがとうございました」の張り紙とともに店員が推薦する本が並んだコーナーが設けられていた。各本には勧める理由を強調する手書きのポップが添えられており、その中の一冊を記念に購入した


▼「ご来店いただきありがとうございました」。代金支払い後の店員の言葉が耳に残った。今までは「またのご来店をお待ちしております」だったと記憶している。初めて聞く言葉に、あらためて最後の日になったという寂しさが込み上げてきた。今後は購入した本のカバーを見るたびに、この書店のことを思い出すだろう


▼書店に限らず近年は飲食店や商店の入れ替わりが激しいと感じる。好きな店を見つけ、顔なじみになったにもかかわらず知らぬ間に閉店していた例が最近もあった。昔ながらの喫茶店が若者向けのお洒落なカフェにリノベーションされたことは街の新陳代謝という意味では喜ばしいのだが、今のところ入ってみようという気持ちになれない


▼新陳代謝とは新しいものが古いものに取って変わることだが、古いものが悪いというわけではない。時代の変化によって一つの役割を終えただけであり、新たな歴史が始まったとも言える。閉店した書店は何に生まれ変わるのか。楽しみに待ちたい。(東京・KK)


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