コラム

2018/08/07

ハコモノから建築物へ(埼玉・YM)

ハコモノから建築物へ


▼先日ある市長の再選インタビューを行う機会があった。市長は「施設を建てて終わりにせず、新施設へ魂を入れる4年間にしたい」と熱く語ってくれた。建物のハード面だけでなく、利用者・サービスなどソフト面も重要視する市長の考えと姿勢を見聞きし、その市をますます取材したいと思うようになった


▼担当する別の地域において着工していた新施設建設事業の見直しが決まった。高額な維持管理費に加え、市街地から外れたアクセスの悪さが主な理由に挙がっている。それらは計画段階で把握できなかったのだろうか。利用者のことを考慮せずに建設する施設はハコモノと言われても仕方がない


▼ハコモノとは地元住民の意向を反映せず運用計画が曖昧なまま建設される施設を指すことが多いように思う。建設費、維持管理費に莫大な税金を費やすばかりで地域経済の足かせになりやすい。高度経済成長期やバブル期に多く見られ、財政状況が厳しい昨今の自治体は複合化や民営化などへかじを切るケースもある


▼一方で地元住民から愛される建築物も多く生まれる。幅広く現場の声を見聞きしてニーズを反映させた賜物(たまもの)だろう。そのためには検討段階から竣工後まで現場へ数多く赴(おもむ)く必要がある。話を聞くだけなら誰でもできるが反映させるのは容易ではない


▼ハコモノと建築物の違いは「建物に魂が通っているかどうか」ではないか。利用者を考慮しない表面的なハコモノは話題になった後、次第に誰も利用しなくなる。魂のこもった建築物は世代を越えて愛される歴史的価値が出る。後世で重要文化財に指定されるような建築物が今後増えてほしいと願ってやまない。(埼玉・YM)


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