コラム

2018/08/21

本当のプロフェッショナル(茨城・KN)

本当のプロフェッショナル


▼絵本作家のかこさとしさんの訃報を耳にした時の寂しさは言葉に表せない。生まれて初めてファンになった作家である。自宅にあった「からすのパンやさん」や「どろぼうがっこう」は夢中になって読んだものだ


▼大人になって、あらためて読み返すと、丁寧に書き込まれた絵の魅力とストーリーテリングのうまさに感心する。工学博士の知識を生かした科学をテーマにした絵本も数多い。分かりやすい文章でありながら深い知識に裏打ちされた丁寧なつくりで「子どもだまし」な作品がまるでない。「子どもさんを侮るな」が、かこさんの創作理念だったらしい


▼6月にNHKで放映された「プロフェッショナル仕事の流儀」では、最後まで作品づくりに取り組むかこさんの姿が映し出されていた。かこさんは「水」をテーマにした新作絵本の執筆に意欲を燃やすが、体力面の理由で絵は別の作家に任せることになった


▼出来上がった草稿をチェックするかこさんの姿は素人目に見ても限界が迫っていることが分かるが、かこさんは草稿を読んで「小さい子どもにも分かりやすいようにもっと簡単な文の方が良い。この文章はいったんご破算だな」と言った。死の間際であっても妥協しない姿。そのこだわりは自分のためでなく読者である子どものため。そこに本当のプロフェッショナルの姿を見た


▼かこさんの著作は600点にも及び、知らない作品も多い。個人的に気になるのがデビュー作でもある「だむのおじさんたち」。ダム建設の過程をかこさんがどう描いているのか、ぜひ読んでみたい。亡くなってもなお、かこさんの作品に魅了される日は続く。(茨城・KN)


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