コラム

2018/09/05

平成最後の夏に(茨城・KN)

平成最後の夏に


▼8月5日、茨城県鹿嶋市の図書館で開催されていた「へいわ絵本の朗読会」を訪れた。鹿嶋市の中央図書館が主催して毎年行っているもので、アマチュア劇団の「プロジェクト・リブ」が読み手となり戦争を題材にした絵本を朗読するという催し


▼朗読会と銘打っているが、読み手はただ本を読むだけでなく表情や身振りも交えて表現する。その姿はまるで一人芝居のよう。題材は全て太平洋戦争に関するもの。沖縄戦、特攻隊、広島に落とされた原子爆弾など。悲惨な描写は多かったが、引き込まれて約1時間を過ごした。客席には大人だけでなく小学生くらいの子どもも何人かいたが、真剣な表情で聞き入っていた


▼終演後、読み手の方とお話しする機会があった。印象深かったのは「平成最後の夏に、戦争を題材にした朗読会を行うというのは意義深い」という言葉。そう、平成は間もなく終わる。この夏が平成最後の夏だ。平成が終わることもだが、昭和がますます遠くなることに衝撃を感じる


▼昭和50年代の生まれなので戦時中も終戦直後も知らない。しかし子どものころは戦争を体験した方が数多く存命しており、戦前の息吹を感じることはあった。今の子どもたちはどうだろうか。戦争がかつてあったということを実感することはあるのだろうか


▼元号が変わり、時代の生き証人が退場していく中、社会全体から戦争の記憶も薄れていく。悲しい記憶だが忘れてしまって良いのかという危機感はある。「平成を知らない世代」に語り継ぐこともきっと必要だろう。朗読会に来ていた小学生の女の子。彼女にはどう響いただろうか。(茨城・KN)

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