コラム

2018/10/31

基礎研究の大切さ伝える(群馬・YT)

基礎研究の大切さ伝える


▼2018年度のノーベル医学・生理学賞を京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授が受賞した。がん免疫療法に活用されるたんぱく質PD-1受容体を発見したことが受賞の理由


▼受賞後の記者会見などで繰り返し語っていたのは基礎研究の重要性。素人目には、すぐに効果や成果が表れる、いわゆる社会の役に立つ研究こそが優れていると考えてしまうが、そこに至るまでには、新たな理論や知識を発見する基礎研究が必要になる


▼これまでにノーベル賞を受賞した科学者も同様に基礎研究を大切にしてほしいとの意見を表明しており、分かりやすい成果を早急に求められる社会の風潮に対して警鐘を鳴らしている。論文数の減少、研究に充てられる費用の減少など具体例として基礎研究の弱体化が表れており、本庶特別教授は若手研究者を支援するための基金を大学に設立する考えを示し、大きな危機感を抱えていることが分かる


▼こうした風潮の中では、短期間で大きな効果を出すことが重要であり、そのためには選択と集中が必要という言説がさまざまな場面で見受けられる。特に行政機関では、何をするにも費用が税金であるために一定の評価基準を持って行う必要性があるのも理解できる。限られた費用と時間の中で、どういった場面で役に立つか分からない事業は敬遠されてしまうだろう


▼公共事業は、効果を発揮するまでに時間がかかるもの、すぐに効果が実感できないものもあり、そうした視点から事業費を削られ続けたといえるのではないだろうか。社会経済活動の基盤をつくる公共事業。無論行政からの説明は必要だが、長い目で見ることが重要だ。(群馬・YT)


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