コラム

2018/10/27

職人は魅了する(山梨・HI)

職人は魅了する


▼どんな職業であっても熟練の域に達した人の所作はカッコいい。その一言に尽きる。もし幼少期にたくさんの職人に出会っていたら今どんな職業に就いていたのだろうか


▼9月。豪雨・強風・猛暑。猫の目のように変わる天気と気温に身体が警戒警報を発令していた。その日も台風接近で外は嵐。こんな日はちょっと贅沢(ぜいたく)に寿司を肴に日本酒でもひっかけますかとスーパーマーケットへ。レジで今晩の主役の品々を広げたその時、その男は立っていた


▼一見何の変哲もない30代くらいの店員さん。商品を読み取り、レジ打ちまでの滑らかな動作は序の口。極めつけはおつりを自分に渡す時だった。硬貨を柔らかく包んだ拳をクルクルッ。鍛錬を重ねた熟練マジシャンに引けをとらない手さばきだ。あっけにとられていると、既におつり確認の時。大胆な挙動とは裏腹に、繊細に手のひらに置かれた硬貨は指先までドミノが倒れた後のようにきれいに整列していた


▼何かを極めた人はやはりカッコいい。赤の他人だといっそう衝撃は大きいもので、自分も魅了されたクチだ。「是が非でもあの技術を習得してみたい」。ひょんな好奇心から今では暇があれば硬貨を手に拳をクルクル回している自分がいる


▼面白い・楽しいと思ったことは誰しも一度は自分で試したくなる。例えるなら幼少期に大好きなヒーローショーのまね事をするようなもの。特に子どもはいろいろなヒトやモノをまねたがる。だから小さいうちに目にした職人技もきっと鮮明に記憶に残るはずだ。伝統技術を知らず知らずにまねし始めて、気が付くと自分の生業にしていた。そんな人生も素敵では。(山梨・HI)


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