コラム

2019/01/23

山古志に見る伝統の継承(群馬・YY)

山古志に見る伝統の継承


▼昨秋、新潟県長岡市山古志地区へ「牛の角突き」を見に行った。山古志の牛の角突きの歴史は古く、滝沢馬琴著「南総里見八犬伝」にも記述がある。長年にわたり地区の神事として守り受け継がれてきた


▼会場となるのは山古志闘牛場。円形の闘牛場を囲むように鉄筋コンクリートのスタンドが配置されており、極めて近代的だ。角突きに用いられる牛は、東北地方から導入された南部牛。体重1000㎏前後で堂々たる風格を持つ


▼訪れて初めて知ったのだが、山古志のほか、新潟県内で行われている牛の角突きは勝負をつけない。あくまでも神事であることが理由だが、人々が古くから牛に寄り添い生活してきたことの証だ。引き分けにするため、勢子(せこ)と呼ばれる男たちが頃合いを見計らい、縄を掛け止めに入る。牛をなだめる勢子の技は見所の一つとなっている


▼1000年前から行われていたという山古志の牛の角突き。その伝統の継承には、人々の多大な努力がある。中山間地域の山古志地区は過疎が進み、2004年に発生した新潟県中越地震が追い討ちをかけた。全村避難で継続が危ぶまれたが、08年に山古志での開催を再開。また18年から女人禁制を改め、女性の闘牛場への立ち入りが解禁された。女性組織もでき、各方面へ情報発信を行っている


▼昨今、各業界においても技術の継承が大きな課題となっている。労働人口の減少による技術力低下は国際競争力の低下につながり、その対策は急務だ。山古志地区の高齢化率は30%ほどで、現在の日本の縮図とも言える。同地区の取り組みに「継承」へのヒントがあるのではないだろうか。(群馬・YY)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら