コラム

2019/01/30

父の製図台を見て思う(新潟・KW)

父の製図台を見て思う


▼福島の実家に1台の使い古されたドラフターが置いてある。A1サイズで図面を引ける製図台だ。設計業を営む父の仕事道具である。盤全体が磁石になっていて、薄い金属の板で専用紙を固定する。ドイツの筆記用具メーカー、ロットリング社やステッドラー社の製図用芯ホルダーを使い、盤面を滑るように動くL字型の定規に当てる。図面に細い線を均一な太さで引くためにペンを回しながら線を引いていく


▼20年ほど前、父がパソコンを新調した。眼鏡を付けたり外したりしながらモニターをにらんでいる。コンピュータ支援設計、CADの登場だ。真っ黒な画面に緑や黄色の線が引かれた設計図は、時代の変化を感じさせた


▼1950年代に積算会社で働いていた父の話では、計算機には紙テープをたくさん使用するので一度の積算に大量の紙束が必要だったらしい。そんな時代があったことが今は信じられない


▼生まれながらITに親しんでいる世代のことをデジタルネイティブと呼ぶ。現代社会で働く多くの人々がスマートフォンの登場やSNSの流行など、IT技術の発展と共に成長してきた。今の子どもたちは全員がデジタルネイティブで、熟練の建築士である父がドローンを使った写真測量や3Dモデル作成について学んでも、次世代を担う若者たちはその何倍もの速度で技術を習得し、さらに発展させていく


▼担い手不足が喫緊の課題である現在、国ではGNSS(全地球航法衛星システム)を使ったICT土工に活路を見出そうとしている。建設技術の発展を目の当たりにしながら、父の製図台を思い浮かべつつそこに至るまでの歴史を思う。(新潟・KW)


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