コラム

2019/03/07

盗塁を支える「犠打」の力(茨城・MK)

盗塁を支える「犠打」の力


▼本年のNHK大河ドラマの主人公は足の速い「いだてん」だが、日本のプロ野球で最も速かったのは通算1065盗塁、元阪急ブレーブスの1番打者だった福本豊氏だろう。その福本氏の盗塁を2番打者として支えたのが大熊忠義氏


▼福本氏と大熊氏が1・2番を組んだ最初の1972年、福本氏は106盗塁を記録し、チームはリーグ優勝した。一方、盗塁を犠打などで支えた大熊氏の打率は前年の3割超えから2割3分台に落ち込む。割に合わない仕事で、年棒も大幅減が避けられない。しかし球団は給料を上げた。「〝辛抱料や〟ということで上げてもろうた。上げてもろたら〝頑張ろうか〟という気にもなりますワ」と大熊さんはインタビューで答えている(二宮清純著『プロ野球の名脇役』、光文社新書)。当時の阪急は強かった。その裏には地味な仕事も評価され、年棒に反映されていたと二宮氏は記している


▼大熊さんは、そんな2番に最初は魅力を感じていなかった。福本氏が盗塁しやすいようバットの芯を外したり、ファウルを打ったり。これが前年3割以上を打った打者にとって、どれほど大変なことか


▼足が速いランナーが塁にいると投手は「いつ走るのか」と打者に集中しづらい。四球で出塁し、二盗。二ゴロなどで三進し、犠牲フライで生還。ヒットは打たれていない。しかしこれが相手投手にダメージを与えるという


▼四球や盗塁、犠打で進塁を狙い、勝利に貢献する。プロ野球ではそんな地味な仕事に徹する選手も評価される。建設業でも犠打のように地道に仕事をする職人たちが評価される、そんな「強い」業界になってほしい。(茨城・MK)


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