コラム

2019/04/25

表裏一体、河川の顔(群馬・YY)

表裏一体、河川の顔


▼先日、所用で茨城県常総市を訪れた。県南西部にある同市は、鬼怒川と小貝川に挟まれ、かつて水運の拠点として栄えた町。人々に富をもたらし、町の基礎を作った2つの河川であるが、古くから地域に水害の猛威を振るっている


▼市内で鬼怒川を渡ると、真新しい堤防が目に入る。2015年9月の関東・東北豪雨。発達した雨雲が列をなす「線状降水帯」の気象用語をこの災害で初めて耳にした方も多いかもしれない。常総市では鬼怒川の堤防が決壊し、広い範囲で浸水した。死者2人、負傷者40人以上、全半壊家屋5000棟以上の被害を出した。テレビ画面に映る茶色く濁った水が今でも強く印象に残っている


▼車を停め、堤防上の道路を歩いてみた。鬼怒川の流れは渇水期ということもあり、遠く視線の先。その姿から3年半前の水害は想像だにできない。行き交う人と時折交わす「こんにちは」のあいさつも日常を感じさせた。決壊箇所のそばに被害を後世に伝える石碑が立つ。17年建立の碑には「決壊の跡」の文字が刻まれていた


▼災害を受け実施された緊急復旧工事は、地域住民の協力や施工企業による施工管理の合理化などで2週間という短期間で完了。本復旧についても約6カ月で終えている。現在は、決壊箇所の前後44・3㎞区間で堤防のかさ上げや拡幅などが20年度末の完成を目指し進められている


▼常総市の町形成の基礎となった鬼怒川。同市だけではなく、豊富な水資源は広く国内の産業発展に寄与してきた。その河川も許容量を超えれば、人命を脅かす存在となる。堤防強化など、治水対策のさらなる推進が求められる。(群馬・YY)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら