コラム

2019/05/09

一人一人の声が力になる(茨城・HS)

一人一人の声が力になる


▼自治体で議会が始まる時期になると、記者は提出された議案書などの取材を行う。補正予算や条例の改正など多岐にわたり、その全てを紙面に掲載することはできず、読者にとって何が必要で何がそうでないかを取捨選択する。大規模な土地の売買などもあり、きちんと目を通さなければならない


▼しかし、請願書や陳情書などは、表題だけ見て用紙から手を離してしまうこともある。なぜなら政治的、あるいは教育的なものが多く、建設産業関係はほとんどないからだ


▼ただ、ドイツのバイエルン州でわずか2カ月の間に175万人の署名が集まったという請願書は興味深い。内容は有機農業を推進し農薬や化学肥料から自然環境を保護しようとするもの。有機農業の基準を満たす農地を2030年までに全体の30%まで増やす、緑地の10%は花畑とするなどとしている


▼州政府は制定に向けた住民投票を実施せず、請願書の文言を一字一句変えずにそのまま法制化するそうだ。ドイツでは殺虫剤の大幅削減などを盛り込んだ「昆虫保護法」の制定も検討しており、環境保護の取り組みを深化させようとしている


▼日本でも高度経済成長期を経て、環境基本法や循環型社会形成推進基本法、生物多様性基本法などが次々と制定され、今では環境保護を軽んじることはなくなった。人の営みは今後も続くものであり「今を生きる人間がよければそれでいい」という考えは許されない。大切なのは地域の人々が自発的に声を上げ、豊かな自然環境を守っていくことだろう。一人一人の声も数が集まれば力になる。これからは請願書にも注目していきたいと思う。(茨城・HS)


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