コラム

2019/06/05

アンチヒーローの背中(群馬・TH)

アンチヒーローの背中


▼わが家では国民的人気アニメのアンパンマンが絶え間なく流れている。1歳半の息子は画面を見つめてテレビから離れない。付き合って鑑賞しているうちに自分も新しい話が楽しみになっていることに気付いた


▼私のヒーローはアンパンマンではなく、ライバルのばいきんまん。アンパンマンを倒すためバイキン星からやってきた彼は、バイキン城にドキンちゃんや部下のかびるんるんたちと暮らす。常に空腹で、ほかのキャラクターから食料の横取りを画策し、それを阻止されるのがストーリーの大筋


▼ばいきんまんは大変に優秀な技術者である。愛用のバイキンUFO以外にも宇宙飛行用、潜水用など、数え切れないほどのメカを開発している。その全ての設計から製作を手掛ける知識と技術は天才的。食料の強奪作戦も暴力による実力行使や、変装を生かした潜入活動、わなを張り巡らせた待ち伏せなど、手法は豊富だ


▼ばいきんまんは決して諦めない。新しい顔を手に入れ、元気100倍になったアンパンマンと対峙しても、逃亡する選択肢はない。勇猛果敢に挑み、鉄拳制裁を受け「ばいばいきーん」の台詞と共に吹き飛ばされる。着地の衝撃から城やメカはボロボロになってしまうのだが、次の回には完璧に修繕を終え、また挑む


▼彼の悲願がかなうことはない。逆にアンパンマンが彼を完全に消し去ることもない。パンを作るためには酵母菌やイースト菌が必要なように2人は共生関係でもあるからだ。劇中のキャラクターや子どもたちはアンパンマンを応援する。ばいきんまんのファンとして、これからも彼の敗戦を見守り続けたい。(群馬・TH)


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