コラム

2019/07/10

人と建物は一蓮托生(埼玉・YM)

人と建物は一蓮托生


▼夏。高校野球の聖地・甲子園では、連日の猛暑に勝るとも劣らない熱戦が繰り広げられる。球児たちは一投一打に日ごろの練習の成果をぶつける。高校野球はプロ野球以上に終わるまで何が起きるか分からない。これまでにも甲子園の「魔物」と呼ばれる奇跡の逆転劇が幾度となく起きている


▼魔物は異様な雰囲気で球児たちを飲み込み、普段ではあり得ないエラーを誘発させる。しかし甲子園にはまれに「怪物」と呼ばれる超高校級の球児が現れる。怪物は裏付けされた高い能力に加え、魔物を演出として自分の力に変える。甲子園がつくり出す雰囲気は敵にも味方にもなる。人は建物の影響を受けやすいのだろう


▼一方で建物の雰囲気を醸成するのも人に違いない。新築時のまま、誰にも使われなければ寂れていくばかりだ。逆に多くの人に使われて修繕しながら改良を重ねると、施設独特の「味」が出てくる。味が雰囲気を醸し、より多くの人を引き付ける。建物は人によって育てられると言っても過言ではない


▼建物が人に影響を及ぼすのか、人が建物に影響を及ぼすのか。因果関係を突き止めるような鶏卵前後論争は当てはまらない。互いが互いに作用し合い、互いに育て合う関係だからだ。ハード面とソフト面の両輪があってこそ、互いの価値が高まっていく


▼現在、老朽化による建て替えが各地で行われている。しかし建て替えた建物もいずれ老朽化する。スクラップ&ビルドのいたちごっこをいつまで続けるのだろうか。「建物と人」の関係は一蓮托生(いちれんたくしょう)だ。壊すのではなく、互いに育て合うことで地域資産が醸成できる関係を築くべきだ。(埼玉・YM)


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