コラム

2019/08/29

小江戸に見る個性ある街(埼玉・YM)

小江戸に見る個性ある街


▼ドラえもんを久しぶりに見る機会があった。大山のぶ代さんの声を聞いて育った身として、水田わさびさんの声は新鮮に聞こえた。主要キャラクターの声優変更から14年がたち、世間ではすっかり「わさドラ」が定着。浦島太郎の気分を味わうと同時に、どこか懐かしさを覚えた


▼大人になってから映画ドラえもんを見返すと、台詞(せりふ)や音楽からメッセージ性が見えてくる。例えば「夢幻三剣士(むげんさんけんし)」のエンディングテーマ「世界はグー・チョキ・パー」(作詞・歌、武田鉄矢)は、個性を伸ばす大切さを伝えている。大人になるほど個性を隠し、周囲と同じように振る舞う社会へ一石を投じる歌だ


▼ある設計団体の会長に話を聞いた。調査基準価格を下回る落札が存在する現状を指摘。「利益がなければ、個性的な設計を生む余力が生まれない。結果、同じような作品ばかりになってしまう」と警鐘を鳴らす


▼取材で埼玉県川越市を訪れた。太田道灌(おおたどうかん)が川越城を築き、江戸時代には流通の要衝として「小江戸」と呼称される街だ。現在、県道川越坂戸毛呂山線の連雀町(れんじゃくちょう)交差点~札の辻(ふだのつじ)交差点間では、江戸情緒が味わえる街並みが形成されている。現代と江戸が一体化し、多くの観光客が連日訪れている。個性を伸ばした街こそ成功する一例といえる


▼全国どこを歩いても同じようなチェーン店舗が目立つ。一方で個性ある個人店、商店街は姿を消しつつある。結果的に他地域と変わらない画一的な街になる。人は、小江戸のような地域特性を生かした街並みに訪れたくなるのではないだろうか。「グー・チョキ・パー」のように、特徴ある街並みが増えてほしい。(埼玉・YM)


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