コラム

2019/09/11

過ぎたるは害悪(茨城・KS)

過ぎたるは害悪


▼2003年に日本が「観光立国」を宣言して16年がたつ。昨年の外国人観光客は3000万人を超え、6年連続で過去最高を更新。政府は訪日旅行者を20年までに4000万人、30年までには6000万人とする目標を掲げ、空港発着枠の拡大、多言語表示など各種施策を着々と進めている


▼しかし、急激な観光客の増加はさまざまな弊害をもたらす。「オーバーツーリズム(観光公害)」である。渋滞、騒音やごみといった環境破壊が典型。スペインのバルセロナでは、年間で人口の5倍以上の観光客が押し寄せ、住民による反観光デモまで起きているという


▼日本も例外ではない。果てしない畑の大パノラマを求め、国内外から年間160万人が訪れる北海道美瑛町。「SNS映え」のために無断で立ち入り、農地を踏み荒らす客が後を絶たない。16年には、物思いにふける人の姿を連想させることから「哲学の木」と呼ばれた名物ポプラが伐採された。マナー違反に悩んだ地主の苦渋の決断だった


▼外国人だけの問題ではない。先の休日、郊外にある農業用ため池に釣りに出掛けた。規模の割には良型な魚が釣れると評判で、県内外から多くの釣り人が来る。その日は珍しく先行者がいなかった。間もなく地主がやってきて、足元の釣り糸を拾いながら、「こうしてごみばかり散らかして帰るから、水を全部抜いて魚を殺した」と。絶望の瞬間だった


▼コンビニエンスストアの駐車場、インターチェンジのランプ沿いの草むら、幹線道路の植樹帯などには必ずといっていいほどごみが捨ててある。マナーは永遠の課題。やはり厳罰化しかないのだろうか。(茨城・KS)


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