コラム

2019/09/14

将来の価値を考える(新潟・HT)

将来の価値を考える


▼新潟市の中心市街地を流れる信濃川に架かる現在の萬代橋が90周年を迎えた。近頃建設される橋梁では、なかなかお目にかかれないRC造6連アーチ橋で、橋梁側面や欄干に施された御影石の化粧が重厚感を醸し出す。信濃川の水面に写るライトアップされた姿は新潟のシンボルとして中心市街地の景観を演出する


▼2004年には重要文化財に指定され、橋をバックに記念撮影する旅行者をよく見かける。しかし重要文化財として保護し、大事に扱われるというよりも日常的に多くの車や歩行者が往来し、幹線道路を支える重要な橋である。90年たった今でも現役だ


▼工事は初めて日本人技術者のみで行われたニューマチックケーソン工法。御影石の化粧は基礎工の掘削土砂が転用できたことから、浮いた予算で景観のために施工されたものだそうだ。機能と強さと美しさを兼ね備え、土木技術の歴史にも名を残している


▼総事業費は240万円、現在の金額で約800億円が投じられたビックプロジェクト。当時の国の道路予算の約70%、新潟県の約20%に当たる事業である。建設計画時には、安全や機能はもとより、どれだけコストが優先されたのだろうか。おかげで新潟地震にも耐えた


▼人が造り上げるものは必ず老朽化が進み、耐用年数がある。いつかはつくり変える時期が来る。より安価でより良いものであることも重要かもしれないが、将来の資産となるものを造っていることを忘れてはいけない。機能やデザイン面、将来の文化財としての価値まで考えれば、少し挑戦的なものがあっても面白い。同じものが並んでいてもつまらない。(新潟・HT)


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