コラム

2019/10/11

見事に操られたあの日(山梨・OS)

見事に操られたあの日


▼以前の仕事で上司だった人が、いつの間にか、ある企業の社長になっていた。とてもびっくりしたが同時にうなずけもした。その頃勤めていたのはさまざまな企業の代理店を運営する商社。携帯電話の販売や手続きを行う店舗に勤務していたところ、店長としてその人が配属された


▼聞けば携帯関連の仕事の経験は浅く、できるのは電話を「掛ける」「受ける」程度。約40人の従業員がいる店舗の責任者としてどう振る舞うのか注目された。責任者といえば「チームの中で一番知識や技術にたけているべき」と、まずは商品知識を必死に覚える人もいる。だがその人は携帯電話には目もくれない


▼最初に取り組んだのは今や古いと言われる「飲みニケーション」。営業窓口・故障窓口・法人・代理店・経理など部署ごとに連日飲みに歩いた。部下の仕事の考え方、悩み、癖、アイデアなどを聞き出す。いつしか「店で一番従業員に関する知識がある人」になった


▼その頃は利用者の急増により携帯の電波が不安定だったため「大事な商談中に通話が切れた」とお客さまが怒鳴り込んでくることもしばしば。〝その筋の人〟にすごまれ、その手の事務所に出向くこともあった。「経費を含め実務的な判断は任せる。対応は一緒にするし、責任は持つ」。確たる後ろ盾に窓口の統括をしていた時にも踏ん張れた。気付けば店はその人の指揮の下、見事に回っていた


▼「とにかく話をすること」。臆測が膨らむことがないよう、相手の気持ち、こちらの気持ちを伝え合う。人というものをよく知り、生かすことができる人。組織人として学ぶところがあった。(山梨・OS)


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