コラム

2019/10/16

うれしかった電話(長野・EM)

うれしかった電話


▼「新聞に載っていた写真をいただくことはできますか」。受話器の向こうの婦人は遠慮がちに切り出した。聞けば、ご子息が自治体の優良工事で表彰されたことを新聞の特集で知ったという。この自治体は企業と共に現場代理人を表彰しており、特集には顔写真も掲載されていた


▼婦人いわく、ご子息には子どもの頃に手を焼かされたらしい。「長男で甘やかして育てたせいか、この先どうなるのだろうと思うこともありました。それがいつの間にかこんな立派な賞をいただくようになったなんて」。話しながら昔を懐かしんでいるのか、声が涙色に変わっていく。「この前来た時、新聞をひょいと見せてくれたんです。今は離れて暮らしているので、写真を枕元に飾っておきたいと思って…」


▼地域の希望を産声に、さまざまな過程を経て具現化される公共事業。造られた構造物は何十年にわたり地域の人に恩恵を与え続ける。優良工事は他の模範となる卓越した施工管理や創意工夫により事業を完遂した証であり、成果品は地域の宝。婦人の認識どおり受賞は大いなる栄誉だ


▼優良工事の特集はこの栄誉を広く周知することが目的でPR効果は高い。しかし、一時期に比べ上向いてきたとはいえ地方の建設産業を取り巻く環境は依然として厳しく、協賛を募る営業も少々腰が引けてしまう


▼思いがけない電話は特集の効果を再認識させてくれた。受賞者はもちろん、受賞者の大切な人たちにも大きな励みとなる。「承知いたしました。こちらこそありがとうございます」。お礼を言って電話を切った。次の特集の営業は少しばかり自信を持って臨めそうだ。(長野・EM)


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