コラム

2019/12/03

ベンチに見る設計の妙(新潟・CY)

ベンチに見る設計の妙


▼東京は京橋3丁目。中央通り沿いに赤いベンチが並んだ。数十台のベンチと通常の2倍のサイズのベンチ。来夏開幕の東京ビエンナーレ(芸術祭)のプレイベントだ。本を読んだり談笑したり、たくさんの憩う姿があり、豊かなにぎわいの場となっている。ずっと前からそこにあったかのようだ


▼手掛けたのはグランドレベルの田中元子さんと大西正紀さん。大事なことは1階で起こるというのが法人名の由来だ。1階をパブリックとプライベートの交差点と捉え、コミュニケーションが自然と生まれる建物・広場・空き地などをデザインする。ベンチもその一翼を担う


▼支局近くの、常に誰もいないベンチに座ってみた。半円型のモダンなベンチがウッドデッキをなぞるようにたたずむ。背後にケヤキ、足元の植栽も四季折々に楽しめるが、大きな交差点脇で車通りが多く、歩く人も忙しそう。どこか所在なくソワソワして、早々に立ち去った。そういえば少し離れた信濃川沿いの土手や近くの公園に置かれたベンチには誰かしらの姿がある。しかも交差点脇のベンチと全く同じ半円型のものだ。違いはなんだろう


▼ベンチはただ置けばいいのではなく、ロケーション×デザイン×設置密度が肝要と田中さん。誰も座らないベンチはそのどこかに問題があると指摘する。交差点脇のベンチは、まず設置密度に改良の余地がありそうだ。複数設置し、適度に離れていたらソワソワが緩和されそうだが、お弁当を広げるのは勇気がいる


▼想像だけでも、居心地の良さを創り出すのは至難の業だ。何気なく座っていたベンチだが、奥深い設計の妙があるものだ。(新潟・CY)


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