コラム

2020/01/18

文化財を守るためには(群馬・YT)

文化財を守るためには


▼2019年10月31日、沖縄県の首里城で火災が起き、正殿などの施設が焼失するという衝撃的なニュースが飛び込んできた。施設内にあった収蔵品などの文化財はもちろん、県民の心のよりどころとも言えるシンボル施設を失った悲しみは計り知れない


▼16年8月から行っていた正殿の漆塗りが18年11月に完了し、鮮やかな朱色に化粧直しした矢先の悲劇となってしまった。一刻も早い復元が望まれるが、資材の確保など課題は多い。火災に限らず、どれだけ備えていても想定を超える災害が起きてしまえば被害は避けられない


▼16年の熊本地震では熊本城が大きな被害を受けた。その復旧は震災復興の象徴として工事が急がれ、19年10月にはより近くで天守閣を見られるようになった。文化財は将来に残さなければならない人類の宝。被害が無いのが一番だが、後世に記録を残す取り組みも重要だ


▼そうした中、文化財の記録を残す新たな方法が技術の発展により誕生した。3Dレーザースキャナーを使い、地域に愛され惜しまれながらも解体が避けられない施設のデータを詳細に残す方法が普及し始めている。4月に火事で焼失してしまったパリにあるノートルダム大聖堂では、3D情報をくまなく収集しており、復旧に大きく役立つことになりそうだ


▼首里城の復元では伝統技術を継承してきた技術者の不足も課題に挙がっている。どの文化財でもそうだろうが、これからは昔の姿に限りなく近く復元するために新旧の技術を組み合わせた運用が欠かせなくなるだろう。技術を組み合わせ、首里城が再び美しい姿を見せてくれることを心から願っている。(群馬・YT)


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