コラム

2020/02/04

責任があるとすれば(埼玉・YF)

責任があるとすれば


▼カキの季節がやってくる。冬期から味わいを増していく真ガキは春先に最も濃厚になる。生で食したときの芳醇(ほうじゅん)でクリーミーな食感がたまらないが、相応のリスクが伴うのは周知のとおり


▼学生のころ生がきにあたった。激しいおう吐と下痢にみまわれ、病床でのたうち回ったのを鮮烈に覚えている。医師から「生で食べるものじゃない」と忠告され、以来それを守り通している。だが、しばしば誘惑に駆られる。三重県鳥羽市を訪れたときは、採れたてに舌鼓を打つ観光客の隣で物寂しい思いをした


▼生食できる店では「食べるのは自己責任で」という文言を見かけることがある。もちろん、保健所の定める厳格な基準を満たして提供しているのだろうが、万が一のことが起きた場合、その責任は消費者だけで負い切れるものなのだろうか。中毒の最たる原因であるノロウイルスの感染力はすさまじい。便や吐しゃ物を通じて爆発的に拡散するため、患者のみならず周囲が脅威にさらされる


▼2011年に起きた焼き肉チェーン店での集団食中毒をきっかけに、牛肉の生食が大幅に規制された。長年連れ添ったレバ刺しとの別れを惜しんだ人も多いだろう。カキも同じ憂き目に遭う可能性は十分にある


▼豊かな冬の味覚を守るためにも提供者のみならず、食に関わる者全てが適切な衛生管理を行う責任がある。消費者としては、食前・食後の体調は常に意識しておくべきだ。間違っても新年会続きの疲れた胃腸に生がきを流し込んではいけない。もっとも一番の責任は、かようなリスクを秘めながらも食べずにはいられない芳醇なカキにあるのだが。(埼玉・YF)


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