コラム

2020/03/31

シンボルとなった旗振り役(埼玉・KM)

シンボルとなった旗振り役


▼古今東西の戦場で、軍の士気が戦局を変えた例は多い。兵の力を十二分に発揮させるため、多くの指揮官が声の限りに励まし、または脅し、神仏の加護を説くなどして軍を鼓舞してきた。試みは時に成功し、時に失敗した。そうした数々の歴史の中で、神業のように劇的な戦果を上げた者もいる。例えば、フランスの英雄ジャンヌ・ダルクだ


▼有名なオルレアン攻防戦では、敗戦続きで戦意を失いかけたフランス軍を鼓舞するため、敵のイングランド軍を前に軍旗を振り回し、矢玉が降り注ぐ戦場で先頭に立って突撃したという。後に続いたフランス軍は大いに奮起し、劣勢はたちまち優勢に。ジャンヌは肩を矢で射抜かれる重傷を負いながらも前線に立ち続け、わずか9日で勝利を決めてしまった


▼その後、勢い付いたフランス軍は敵の拠点を次々と陥落させた。強さの秘密がジャンヌの軍才にあったのかどうか定かではないが、ジャンヌを中心に軍がまとまり始めたのは間違いない。はじめは否定的だった指揮官たちも、先頭をひた走るジャンヌの姿に心を打たれ、やがて支持するようになったという


▼優れた旗振り役としてジャンヌは立派だが、彼女を支えた男たちもまた立派だった。常に陣頭にあった彼女が、ついに戦死しなかったからだ。旗振り役の後を追い、守り、組織として能力を発揮したからこその連勝街道だったのではないか


▼後に捕縛され炎に消えたジャンヌだが、彼女の築いた団結はフランスを統一へと導いた。享年19歳。短い一生を駆け抜けた旗振り役は、今やフランスのシンボルとして後世に語り継がれている。(埼玉・KM)

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