コラム

2020/03/20

屁の叱責に学ぶこと(埼玉・KM)

屁の叱責に学ぶこと


▼昔、千葉県北部を治めた戦国大名に千葉邦胤(くにたね)という若殿がいた。ある日、新年を祝う席でのことだ。多くの参賀者を供応中、家来の万五郎なる若輩が満座で屁をこいた。しかも2発。邦胤が無礼を咎(とが)めると、万五郎は誇りが邪魔したか「出もの腫(は)れもの所構わず(出るものは出るのだ)」と返答。よもやの開き直りに激怒した邦胤、万五郎を蹴り倒すと刀に手を掛け一同騒然。周囲に止められるという騒ぎになってしまった


▼その場は何とか収まったが、悲劇は後からやって来た。ある夜、邦胤が寝ていると寝所に万五郎が忍び込んできた。そして短刀一閃。主君を刺し、自身も切腹して果ててしまった。大勢の前で恥をかかされたと恨みに思ったらしい。屁の叱責は、屁のようなとはとても言えない最悪の結末を迎えたわけだ


▼とかく、人の叱り方は難しいと言われる。パワハラに敏感な今日ではなおさらだろう。叱り方を間違ったために立場を悪くしたという話も耳にする。部下を持つ方、管理職の方の苦労は計り知れない


▼職場の人間関係は若手の離職にも大きく影響するようだ。労働政策研究・研修機構の調べでは、離職理由として、男女ともに人間関係の悪化が上位に来ている。また離職率の高さに、上司や先輩からのコミュニケーション不足が指摘されている点も興味深い。仕事に付き物の叱責が良い結果を生むにはどうすればいいのか。叱る側にも叱られる側にも課題があろう


▼さて、大混乱に陥った千葉家。邦胤は汚名を残して世を去り、間もなく家は滅んだ。元は屁で始まったこと。しかし、失笑では済まない教訓を今に伝えている。(埼玉・KM)

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