コラム

2020/04/11

化石がそこここに(新潟・CY)

化石がそこここに


▼ある日を境に真っすぐに歩けなくなってしまった。駅や大きなビルで症状が現れる。街中にたくさんの化石があるのだ。地中奥深くか、博物館などしかるべき場所にあると思いきや、さにあらず。足元や壁にそれらはある。毎日見ていたはずのおなじみの場所に化石。突如日常に食い込んできた。きっかけは街角地質学を知ったこと。名古屋市科学館の学芸員で「街の中で見つかるすごい石」の著者、西本昌司さんの活動だ


▼薄く切られた石材に潜んでいて、床の敷石の中であったり、柱の中であったりする。新潟市内の歴史あるビルのエレベーターホールにも、見事なアンモナイトが三つ。地下鉄銀座線三越前駅はアンモナイト、銀座駅にはウミユリがずらり。改装工事で趣は変わったらしいが、撤去された石材の一部は地下鉄博物館に保存されている


▼アンモナイトは渦巻き模様が分かればいいが、輪切りだと見つけにくい。名古屋駅の床には大量のウニの化石があるそうで、写真を見ると白っぽい細長い輪。どこにでもある石の模様にしか見えない。そもそも、ウニの化石を知らないのだ


▼ある美術研究者が学生たちにこんな調査を行った。写真を見ながら映っているものを書き出すシンプルなもの。ところが意外な結果が出る。学生たちが書き出したのはよく知っているもののみで、目立っていようがいまいがよく知らないものについては、一切の描写がなかった


▼見えていても、見てはいない。読んでいるようで、読んでいない。人は見たいものが見たいとはよく言ったものだ。時に残念な誤解を、時に驚くべき楽しい発見の伏線も生んでいる。(新潟・CY)


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