コラム

2020/04/25

歴史に範を取る(群馬・YY)

歴史に範を取る


▼ことしはWHО(世界保健機関)による天然痘の撲滅宣言から40年の節目に当たる。天然痘ウイルスを病原とする感染症で主に飛沫(ひまつ)や接触により感染する。発熱や呼吸困難、発疹などの症状が見られ、致死率は平均で20~50%と極めて高い。紀元前から記録が残り、世界各地で人々の生命を脅かしてきた


▼日本でも約1400年前の飛鳥時代に往来があった中国や朝鮮半島から移入。奈良時代の天平年間に流行し、当時の政権の中枢にいた藤原四兄弟(藤原武智麻呂(むちまろ)、藤原房前(ふささき)、藤原宇合(うまかい)、藤原麻呂(まろ))が相次いで亡くなるなど政治的、社会的混乱をもたらした。戦国大名の伊達政宗も天然痘により右目を失明するなど、歴史上の偉人にも罹患者は多い


▼天然痘の撲滅へ向け、半ば呪術的なものまで古くからさまざまな試みがなされてきた。医学的な予防法の確立は、近代免疫学の祖とも称されるイギリスの医学者、エドワード・ジェンナー(1749~1823年)の貢献が大きい


▼ジェンナーは、牛を宿主とする感染症である牛痘の罹患(りかん)者が天然痘にかからないという民間伝承を元に、牛痘ワクチン接種による予防法を発見した。当時の社会的常識から来る批判に負けず、約20年にもわたる地道な研究の成果であった


▼新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大により、世界は今、混沌(こんとん)の様相を呈している。日々の行動を巡り、人々の間で非難の応酬も見られ、終わりの見えない閉塞感が覆う。風聞に惑わされぬ行動が好転への一助となる。天然痘との戦いに終止符を打ったジェンナーの研究から困難へと立ち向かう姿勢を心に刻みたい。(群馬・YY)


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