コラム

2020/05/14

この時期じゃなきゃだめ?(山梨・OS)

この時期じゃなきゃだめ?


▼大丈夫か?と聞かれると大丈夫じゃなくても大丈夫と答える。日本人には無理をしてでも頑張ることを美徳とするところがある。ある労働基準監督署の署長がそう語り、労働災害への注意を促していた


▼真面目な性格で依頼されれば、できるだけ応えようとする。不満を言わずにやってくれるから上司も仕事を言いつけやすい。言いつけやすい人に仕事が集まる。どんどん集まる。繁忙期はさらに加速し、いつしか一線を越える


▼「そんなに無理したら早死にしちゃうよ。子どもが3人もいるんだから気を付けないと」。そう声を掛けた数週間後に知人は倒れた。朝出勤前に急なめまいに襲われ119番に通報。症状から緊急搬送が必要だと判断され、ドクターヘリで救急病院に搬送された


▼意識はあるものの反応が鈍い。検査の結果、脳出血だった。倒れた時期は繁忙期で残業は月78時間に上った。国が示す過労死ラインは月80時間。会社からは労災認定されるか微妙だと言われた。いまだに話す言葉がはっきりしない。右半身にまひも残る。リハビリの日々に今後の生活の不安が家族に重くのし掛かる


▼多くの仕事に繁閑の波はある。だからといって、お客に注文の時期を調整してくれとは言いにくい。相手が公共団体だったらなおさらだ。働き方改革を、魅力的な建設業を。労働環境の改善が叫ばれる中、多くの自治体は前例踏襲、従来通りを優先しているように見える。その時期でなければ、できない工事もある。だが大半は単年度での予算執行を考えてのこと。予算の繰り越しや前倒しに必要な手続き…。手間は掛かっても人のためにやってほしい。(山梨・OS)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら