コラム

2020/05/21

お後がよろしいようで(茨城・RN)

お後がよろしいようで


▼また本稿の締め切り日が来てしまった。楽屋の裏を見せるようで恐縮だが、題材にはいつも頭を悩ませている。今回は何を書けば良いんだろう…と途方に暮れていたら、棚に置かれていた『コラムの書き方』を見つけた。開くと「落語を聞いて、構成を参考にせよ」とある


▼学生の時に授業で「死神」という演目の映像を見た。どうしようもない男が死神に超能力を授かって成功するが、金に目がくらんで言い付けを破ってしまう。怒った死神がいまにも燃え尽きそうなろうそくを指して「これがお前の寿命だ」と男に言い、新しいろうそくに火を移せれば助かると話すが…という場面が有名か


▼授業からしばらくたった後、飛行機の中で同じ演目を聴く機会があった。すると、話の筋や結末は同じでも、語り手が違うと細部が異なっていて同じ話とは思えない。伝統的な話芸の巧みさ、面白さに驚かされた。プレゼンテーションの専門家であるガー・レイノルズ氏は、落語家は日本が誇るプレゼンターだと言う


▼発表や会議など人前で話す場に苦手意識を持つ人は多いのではないだろうか。プレゼンを成功させるためには入念な準備と練習が必要だ。アイデアを出す段階から本番を想定した練習に至るまで、集中して取り組まなくてはならない。一人前の落語家になるために修行が必須であるように。安直な方法などないのだ


▼伝えるという点では文章も同じ。コラムを書くにも日ごろからアンテナを張り、アイデアを出すなど事前に準備をしていなくてはならないそうだ。締切当日に慌てる人間に救いはないが、今回も首の皮一枚でつながった。(茨城・RN)


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