コラム

2020/05/22

こんな世界に誰がした(埼玉・YM)

こんな世界に誰がした


▼虐待の相談員が、児童を追い返したというニュースを読んだ。親の虐待から逃れたい一心で、蜘蛛の糸をつかむ心境で訪れた施設員が相手にしてくれない。児童の心境は想像を絶するものだったろう。児童虐待は後を絶たず、2018年度を見ると前年度比2万6072件増の15万9850件に上った。この結果は単に虐待件数が増えたと捉えるより、実態が顕在化してきたと見る方が妥当なのではないだろうか


▼埼玉県内では、県が新たな児童相談所を新築しようとする動きがある。虐待に苦しむ児童が相談できる施設整備は大いに歓迎すべきだ。もちろん施設だけあって、児童を追い返す相談員がいたのでは話にならない。施設と中身の均衡が取れてこそ、虐待根絶につながる


▼わが子をなぜ虐げるのだろうか。望まない子だったのか、言うことを聞かない子だからか。児童自身がその理由を知る由もない。かくいう自身も幼少期に酷い虐待を受けてきた。今でも心の傷は癒えていないし、おそらく死ぬまで癒えることはない。こんな世界に誰がしたのだろうか


▼子は親を選べない。虐待から逃れるすべを持てる子どもは、どの程度いるのだろうか。経験から言って、握りつぶされている事象がまだまだあるだろう。虐待という社会的病理を根絶するには実態を正確に把握しなければならない。相談件数の増加は、むしろ虐待根絶につながる良い結果とも受け取れる


▼虐待を受けた子どもが大人になった時、自身の子どもを虐待してしまう事例がある。負の連鎖は断ち切らなければならない。施設整備と相談受け入れ体制をより一層加速すべきだろう。(埼玉・YM)

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