コラム

2020/05/23

竣工式を開く意味(山梨・TH)

竣工式を開く意味    


▼3月は竣工式に出席した人も多かったことだろう。建築物が無事完成したことを関係者に披露し、建築物の末永い繁栄を祈願する本当に神聖なもの。式に出席した、ある社長は「この背広似合うかな。ネクタイを締めるのは久し振りだ」と照れくさそうに話した


▼しかし、ことしは新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため式は中止になり、工事に関わった多くの建設業者も招かれることは少なかった。出席がかなわなかった社長は「(竣工式は)われわれの晴れ舞台。普段着ないスーツや滅多に結ばないネクタイを付けると気が引き締まる。発注者や地域住民にもアピールできるから誇りにもなる」と話し、式が行われないことを非常に残念がった


▼仕事柄、竣工式を取材する機会は多く、さまざまな感動を覚えて帰社する。入社後初めて取材した式は今でも忘れない。小さな学校で児童も少なく、自身とも重なったからだ。式では壊される前の旧木造校舎の思い出なども振り返った


▼施工者を代表してあいさつに立ったのは年老いた社長。幼少のころの思い出や戦争時代の体験を語った後で「旧校舎が壊されるのを見て涙が出た。柱や廊下の傷一つが私の思い出。重機で壊されるのは辛かった」と目頭を押さえる姿を見て、思わずもらい泣きをしてしまった。新校舎の完成も確かにうれしいが、建物にはさまざまな歴史や思い出があることを学ばせてもらった


▼竣工式は工事が無事に終えたことを神様に報告する場であるとともに、末永い繁栄を祈願する場でもある。発注者と建設業者のためにも今後は通常通りに開催されることを願いたい。(山梨・TH)


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