コラム

2020/06/17

見えないものの棚卸し(埼玉・MK)

見えないものの棚卸し


▼江戸時代の商店は年に2回ほど店を閉じ、在庫と帳簿を突き合わせて数量や値段を確かめる「棚卸し」をしていたという。しかし時がたつにつれ、在庫を事細かに調べることから転じて人の欠点をいちいち数え上げる意味も表す言葉になった


▼いつごろから使われ始めたのか定かではないが、少なくとも明治時代に書かれた小説に「あなたの様に夫人の棚卸しをなさるは」という一文があることから、この頃すでに悪い意味で使われていたことが読み取れる。細かい点を一つ一つ指摘されれば、誰しも気がめいるに違いない


▼本来の意味での棚卸しを必要としているのが、コロナ禍での現代企業だ。多くの社員を在宅勤務に切り替える企業が増える中で、効率化をいかに進めるかが課題となる。オフィスと自宅の働き方の違いに慣れてきた方も多かろう。これまで何の疑問も持たずにこなしてきた仕事について、落ち着いた気持ちで見直す機会になったかもしれない


▼自宅で働く一人一人が冷静になれば、本当に必要な仕事とそうではない仕事をふるいにかける時間が生まれる。その際、業務の「棚卸し」をしてみるのはいかがだろうか。業界や職種が違えば、一日の行動パターンや出会う人の数は変わる。一人一人が本当に時間を割いて取り組むべき仕事も千差万別だ


▼あるいは自分自身の歴史を「棚卸し」してみるのも興味深い。これまで築いたキャリアを一つ一つ点検し、自らの価値を評価することでコロナ終息後に新たな道を開けるかもしれない。のちに振り返って「2020年はコロナだけの年だった」と嘆くことのないように一日一日を大切に過ごしたい。(埼玉・MK)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら