コラム

2020/08/05

時代を越えて生きるローマ(埼玉・YM)

時代を越えて生きるローマ


▼i-Constructionが建設業界に定着して久しい。Constructionは、struct(積み重ねる、建てる)に接頭辞con(共に)が付いた単語を名詞化したもの。資材を積み重ねて家や橋、ダムを造るため、単語の語源に納得がいく。積み重なった資材に役割があることも


▼家の構造は単純で、屋根は雨から身を守り、壁は風をしのぐ。寝るには床も必要だ。資材は変われど、古代ローマ時代からも続く変わらない家の要素だ。それぞれの部品が積み重なってこそ、利便性やデザインなどの付加価値が生きてくる


▼主機能が普遍的である以上、作品の個性は付加価値で決まるだろう。しかし、個性を求めるあまり機能より付加価値を優先した作品も見られる。利用者や維持管理を考えず、デザインを優先した建物は建築家の自己満足に過ぎない。まして、中身を積み重ねず外見だけ取り繕うのではConstructionとは呼べそうにない


▼新聞記事も取材の積み重ねて書き上げる点ではConstructionと同じかもしれない。普段は読者が求める情報を求めて東奔西走する。しかし、一歩間違えると読者を見失い、自身の好奇心を満足させるためだけの自己満足記事になりかねない点も似ている


▼Constructionは「積み重ね」のほかに「説明」という意味もある。理路整然と物事を説明するには、何事も一歩一歩の積み重ねが肝要だろう。それは、デジタルもアナログも問わない普遍的要素に思える。「ローマは一日にして成らず」の意義は、時代を越えて生き続けてる。それもまたロマンだ。(埼玉・YM)

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