コラム

2020/09/05

理不尽な不採算(埼玉・IK)

理不尽な不採算


▼8月、発注者の対応に困惑する地元企業の切実な声が編集部に寄せられた。「過去の古い見積もりに基づく工事が発注されている」。詳細を聞けば、採算が見込めない工事の入札を農業者が組織するある法人が通知してきたことで、社内が対応に困っているという


▼その会社が見積もり提出に協力したのは1年以上も前。当時と今で、労務費や資材価格などに開きがあるのは当然とも思えるが、発注者に説明を求めても「提出された民間の見積もりに従った」と返されるだけ。工事価格を見直す気配はなかったようだ


▼適正収益の確保は企業にとって死活問題。「赤字の工事受注だけは避けるよう従業員には周知している」。先日インタビューした企業経営者はこう話す。工事1件の不採算を取り返すために、どれだけの営業努力が必要になるか。まして、現在のコロナ禍。先行き不透明な経済情勢で受注戦略を練り直していた最中、発注者から冷や水を浴びせられたとなれば、同情も禁じ得ない


▼訴えてきた企業の担当者は憤りのやり場を求め、建設専門紙に疑問を投じてきたものらしい。不意に降り掛かった理不尽。受注が義務ではないとはいえ、発注者との今後を考えると応札辞退するわけにもいかない。担当者は静かに電話を切った


▼気になったので少し調べると、その法人は地元自治体の補助対象。ならば、公共発注機関の一員として健全な産業発展に寄与する責任もありそうだが、そうではない実態がある可能性に今回気付かされた。同時に、自身の知識の未熟を知る。せめて、工事が無事終わることを願ってやまない。(埼玉・IK)


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